共感できる凡人の気持ち - "コントラバス" / パトリック・ズュースキント著
"コントラバス"は、ときどき無性に読みたくなる不思議な魅力を持った本です。
映画化もされた小説"香水" (映画:パフューム)の著者、パトリック・ズュースキントの作家デビュー作。一人芝居用の台本として書かれたこの作品は、語り口調で読みやすく2時間弱、早い人なら1時間ぐらいで読み終わると思います。
... ほかの楽器が束になろうとかないっこないです。だいいちぼくらがいなかったら、なに一つ始まるはずがないんですよ。だれにでもきいてみてください。オーケストラは指揮者なんていなくても困らないけど、コントラバスぬきじゃ話にならないって、音楽家ならみんな口をそろえていいますから。 ...
"大黒柱"、"縁の下の力持ち"とコントラバス奏者は、この楽器を演奏することに誇りを持っています。虚しいですよね。地味で目立たなくって注目されることなんてほとんどない。そんなことわかっていながらも、この楽器はすごいんだと言っているんです。
深い深いテーマもありそうですが、文学にうとい自分にはそこまで読み取れません。ちょこっと共感できて、読み終わると妙に満足している、そんな不思議な本です。